▪️事実のまとめ

鹿児島県和泊町の介護老人保健施設「沖永良部寿恵苑」が、鹿児島県の介護サービス事業所ICT導入支援事業で260万円の補助金を不正に受け取った疑いが浮上しました。施設を運営する医療法人慈心会は、介護ソフトを導入したが、そのソフトをインストールしたパソコンを廃棄したと説明し、不正を否定しています。

沖永良部寿恵苑は、2020年夏ごろに605万円相当の介護記録や請求業務を一元管理するソフトを導入すると申請し、2021年5月に補助金を交付されました。しかし、鹿児島県は今年6月に施設を抜き打ち検査し、ソフトの有無を確認しました。

慈心会の理事長は、ソフト導入後にパソコンを廃棄したため、ソフトがないことを県の検査で初めて知ったと説明しています。また、補助金を全額返還する意向を示し、申請手続きには業者の手助けが必要だったと語りました。一方、ソフトウェア販売会社の代表は、申請は施設が行い、同社は導入したとの見解を示していますが、詳細についてはコメントを避けました。

慈心会は、国の「IT導入補助金」でも同じソフトウェア会社から物品を購入したと申請し、297万円を受け取っていますが、理事長はこの件に関しては取材に答えませんでした。

沖永良部寿恵苑は1991年に開設され、沖永良部島唯一の介護老人保健施設として58人が入所しています。

<見解>

今回の補助金不正受給疑惑は、介護施設の信頼性と補助金制度の透明性に重大な疑問を投げかけています。慈心会が補助金を不正に受け取った疑いが浮上する中で、理事長が補助金の全額返還を表明したことは一定の責任を認める姿勢を示していますが、問題の全貌解明には至っていません。

ソフトウェア販売会社の役割や申請手続きの詳細についての不明点が多く、関係者間のコミュニケーション不足や手続きの不透明さが露呈しています。今後、県の調査が進み、事実関係が明らかになることが求められます。

さらに、国の「IT導入補助金」についても同様の疑惑が浮上していることから、補助金制度全体の見直しや監査体制の強化が必要です。介護施設や関連業者が適正な手続きを遵守し、補助金を正当に活用するための指導と教育が重要です。

この事件を通じて、補助金制度の透明性と信頼性を向上させ、再発防止に向けた取り組みが求められます。介護施設の利用者や地域社会に対しても、信頼回復に努めることが不可欠です。