事実のまとめ>

東京地検は18日、元双日社員の真鍋昌奨容疑者(32)を不正競争防止法違反(営業秘密侵害)罪で起訴しました。被告は転職元の兼松株式会社の営業秘密を不正に取得し、持ち出していたことが判明しました。真鍋被告は、兼松の同僚だった元派遣社員のIDやパスワードを利用してデータベースにアクセスし、自動車部品の取引台帳など3つのファイルを不正に取得していました。また、約5万ファイルのデータをダウンロードして持ち出していたことも明らかになりました。

兼松と双日両社は、真鍋被告に対して秘密保持の誓約書を交わしていましたが、被告はこれを無視し、兼松在職中にも自らのアカウントでデータベースにアクセスして情報を持ち出していました。

<見解>

今回の事件は、企業の営業秘密の保護の難しさと重要性を改めて浮き彫りにしました。企業は、従業員に対して秘密保持に関する誓約書を取り入れるなどの対策を講じていますが、情報流出を完全に防ぐのは難しい現状があります。

野村彩弁護士は、誓約書の締結は心理的な抑止効果があるとしつつも、営業秘密へのアクセス権限を限定するなどの物理的な抑止策も必要であると指摘しています。経済産業省も、私用のUSBメモリーの持ち込み禁止や、秘密情報を保管する端末のインターネット接続制限といった具体例を挙げています。

しかし、悪意ある情報流出を完全に防ぐのは依然として難しく、今回の事件でも不正取得の巧妙な手口が明らかになりました。企業は、情報流出が発生した場合には厳格に対応し、不正競争防止法に基づく刑事告訴などを行うことが重要です。また、持ち出された情報が「営業秘密」として裁判所に認定されるためには、日ごろからの管理徹底が求められます。

双日は18日、元社員の起訴を受けて「厳粛に受け止めている。再発防止に努める」とコメントしました。今回の事件を契機に、企業は営業秘密の保護対策を一層強化する必要があります。

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